不思議なねずみ

1979年頃のお話し。

ある休日に喫茶店で珈琲を飲み、雑誌を読んで過ごしていたとき、いつもなら漫画の単行本か週刊雑誌を読んでいるのだが、この日は何を思ったのか、活字が一杯に詰まったビジネス雑誌みたいなのを手にした。パラパラと適当にページをめくり、内容をおおよそな間隔で読み飛ばしていた。
すると変な記事、コラムみたいな・・・ところで目がとまった。詳細は忘れてしまったが、それは筆者が自分の体験を書いていた内容だったと思う。筆者がいつものように机に向かって原稿を書いていると、ちょろちょろ何かが動き回るのが見えた。はじめは気のせいかと思っていると、また何かが動き回った。「何かな?」と書くのを止めてしばらく様子をみていると、その動き回っている何かは、目の前のブラウン管の中へと入ってきて、その中を動きまわった。よ~く眺めると小さなねずみだった。筆者はそのねずみを追い出そうとするが、なかなかすばしっこくて捕まえられず、最後まで追い出すことが出来なかった。そんな感じの話だったと思う。
その記事を読んだ私は、ねずみがブラウン管の中を動き回るって? どうやって中に入った? 小さいといってもブラウン管には入れないだろう・・・などと、頭の中は???だらけだった。ずっと、その話は不思議でならなかった。ねずみがブラウン管に入るなんてあるんだぁ??? と、そんなことから数年後、たまたま転職した職場が半導体の製造と検査をしている会社で、そこにはオタクと言えるような同僚が居た。その同僚からマッキントッシュを譲り受けた。マッキントッシュって名前を知らず、りんごって言われて余計に訳が分からなくなった記憶がある。でも興味と好奇心で使い方なんかさっぱりわからないけど、同僚から教えて貰った通りに、毎夜毎夜仕事が終わると真夜中まで、ガチャガチャいじっていた。
そんなこんなで2週間ほど経ったころに、ようやく動いた。スタートレックのゲームと意味不明なバイオリズムを計算する何か。
初めのうちは、キーボードを駆使してゲームしていたが、なかなかやりにくい。同僚にそのことを話すと、マウスを使えとアドバイスされた。私はマウス? って、ねずみを使うってどういうこと? ねずみを捕まえてゲームしろと? まったく同僚のいうマウスが理解不能。
同僚とは勤務シフトが合わず、数日はそのマウスについて話ができなかったおかげで、私はねずみが頭から離れられずに居た。で、思い出した。そうだ以前雑誌で、ブラウン管の中をねずみが動き回ったという記事を思い出した。「あ~、あのねずみのことなんだ」と、一人合点がいったのだった。
そんなガッテンのすけの私は同僚に、どうやったらねずみを捕まえられるかと尋ねてみると、同僚は腹を抱えて大笑いしだした。なぜ、そんなに笑うのか訳が分からず、私は大真面目な顔でねずみの捕まえ方を教えてくれと頼んだ。すると、更に同僚は椅子から転げ落ちるようにして大笑いしだした。私は同僚の大笑いにやや不機嫌になってきた。そう、もうこれを読んでいる皆さんはお解りであろう。動物のねずみじゃなくて、コンピュータで使うマウスのことだってことを。当時はコンピュータが珍しく、画面に映るカーソルはねずみの様な形をしていて、そのねずみは手元のマウスで動くのだ。これが私のコンピュータとの出会いだった。そんなお馬鹿なお話しでした。

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