1978年夏の夜のできごと
この日は仲の良い友人達と車2台で彼女の家へ向かい、その近くの公園に行くことになった。私と友人にとっては初めての場所だ。公園といっても、ちょっと小高い場所に空き地みたいなところで、別にベンチも遊具もない。
真夏だから夜でも暑い。確か19時頃だったと思う。その場所までは彼女に案内されて、一般では通らない裏手から細い道を上って行った。道の両側は草が生い茂っているが、小さい山というか丘というか、そんな場所だからこれといって建物もない。辺り一面は何もない静かな所だ。
もう少しで着きそうな辺りで、突然、全身に鳥肌が起ってしまうほどの寒気を感じだ。その瞬間は「あっ」と声を発したため、彼女も「どうしたの?」と聞いてきた。「一瞬、寒気を感じた」とだけ言って、その場はそのまま終わった。それだけのことで一瞬だったし、あまり気に留めるほどのことでもなかった。
公園に着いてからは、友人達と約1時間ほど馬鹿話をして楽しい時間を過ごした。そして彼女が遅くならないように来たときの道を逆に彼女の家に送って行くことになった。すると、突然全身に鳥肌が起ってしまった。それは来たときに寒気を感じたときと同じ場所で、また一瞬のことだった。
私は草で生い茂った場所を指さして彼女に尋ねた。「そこに何かあったりする?」
彼女がいうには、そこには古いお墓があると・・・。もう草で覆われてお墓は見えないけど、かなり古いものらしい。
私は「ふ~ん」とだけ言って、その場を離れると寒気もなくなり、何もなかったように鳥肌もすぐに収まった。その場所を通るときだけの、ほんの一瞬の出来事だった。
公園から彼女の家までは車で約30分位の距離だったが、彼女の家に近づいたときのこと。私が運転する前方に何か人影のようなものが数体見える。私は彼女に「何か影がうろうろしているのが見えるんだけど」と独り言のように呟いた。彼女は「何も見えないよ」と応える。私は「そっかぁ、車のライトなんかで何かの影が人影に見えたのかもね」と、そんなことを話しているうちに彼女の家に着いた。ところが、着いて車を止めた途端、私は意識が朦朧となり、暑い夜なのに寒い寒いと震えが止まらず、運転席で動けなくなってしまった。この後は所々記憶が途切れており、多分意識がなくなったんだと思う。次の記憶は病院に運ばれていて、なんだか分からない注射を打たれているところだった。その後の記憶もなく、次にあった記憶は彼女の家で看病されている状況だった。
一瞬、何がどうなっているのか理解できなかった。何故なら彼女の家族との面識もなく話したこともないし、彼女も私が付き合っている相手であることを話してなかっただろうから、この状況どう説明しようかと、朦朧とする意識の中で思ったけど、また意識がなくなってしまい、次の記憶は朝になっていた。
朝には前日の私の様態が嘘のように元気になっており、私は彼女の家族に挨拶を済ませて足早に帰ってきた。
数日後、彼女の家へ先日のお礼をしに訪ねて行った。彼女との関係は特に何も話さず、お礼を済ませてさっさと帰ることにした。なんか先日の出来事をどう説明してよいやら、彼女との関係もどう説明してよいのか、何も整理ができていなかったから。
すぐに帰ろうとする私に、彼女が話しかけてきた。あの後、私も人影のようなものを見たと言うのでした。
彼女の家族は昔医者にも見放されて死にそうになった兄妹が居たらしく、ある宗教の信心をするから兄弟を救って欲しいと念じたそうで、それが功を奏したかは定かではないが、兄妹は無事に快復したとか。
そんなことで彼女も私の言うことを疑わなかったし、むしろ私の身を案じ、自分が長く大切にしていた数珠を持っているようにと渡されることになった。その後、数珠の効果は残念ながら私には無いようで、相変わらず何か人らしき影はちょくちょく見かける。でも、意識がなくなるような、身動きがとれなくなるようなことは起きていない。
あの影がなんだったのかは、今もわからない。
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