自殺のあったビルに近づいたとき

仕事から会社へ帰る途中の出来事。

日帰りの仕事で、製品の納品に東京から岐阜へ上司の運転する車で出張した。この納品では、私の仕事ぶりは上司には不評だった。
コンピュータのシステムを私はさっさと古いシステムを削除して、新しいシステムに入れ直した。しかし、システムは順調に動かなかったため、古いシステムに戻せなくなったことで怒られてしまった。
このときはなぜ怒るのかなぁと、ちょっとわからなかったが、後になって思えば理解できた。でも新しいシステムは十分にテストで確認されており、何が何でも新しいシステムにしなくてはならなかったので、古いシステムに戻す選択肢はなかったし、日帰り出張で時間に余裕もなく、私には削除に躊躇いはなかった。このやり方が上司には不評だったのだ。
でも仕方ない、システムの担当は上司で私は助手。
結局、システムの入れ替えも無事終わり、私が初めて担当したマシンのインターフェースは何の不具合もなく順調に稼働したこともあって、上司も機嫌が良くなって東京に帰ることとなった。

帰りの車中では、馬鹿話を上司としながら東京に入り、その中でビルから飛び降り自殺をしたニュースの話に何故かなったとき、私は突然急に飛び降りる若い女性の光景が脳裏に浮かんできたので、その様子をつい、口に出てしまった。
私の不思議体験のことは、当時務めていた会社の誰にも話してはいない。
私は北海道から東京本社へ出向中だったこともあり、東京の地理や事情をほとんど知らない。
突然のことだったし、つい出てしまった私の言葉に、上司は強く反応し、「怖い話はやめてよ」が上司が直後に発した一言だった。
普通、飛び降り自殺した光景のことをいえば、怖がったりするし、そんなことでの上司の反応かと思った。
ところが、その後上司は語り始めた。
実は、数年前にあのビルで実際に高校生くらいの若い女性が飛び降り自殺したというのだ。
それも私が口走った通りの様で、ビル、時間、場所も一致しているらしい。
当時私が発した内容の詳細がどうだったかは、今はほとんど記憶にない。うっすらと飛び降りる光景の記憶があるくらい。

数日は、このときの出来事の話題で職場は変な盛り上がりだった。

あるとき、突然に無意識に何かを口走ってしまうことや、行動に出てしまうことが希にあるが、そのときの自分の意識は実に無感情だ。

自分の発したことばや行動であるが、他人事のように何もなかったかのようにしている自分がそこにいる。自分の中にもう一人の自分を冷静に観察しているような、説明し難いがそんなことがある。

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